日本最大の鍾乳洞
安家洞
 岩手県内には500本以上の洞穴が確認されているそうですが、巨大な洞穴が多いのが特徴です。それは石灰岩地帯が多いためで、石灰岩地帯の広さとしては沖縄県に次いで全国で2番目の広さをもっています。
 中でも岩泉町〜久慈市にかけての安家石灰岩の地帯には鍾乳洞が多く、北の方から内間木洞、氷渡洞・坪沢の穴、安家洞、相良・八郎の穴、桃の木洞、龍泉洞、大穴、などは総延長1000メートル以上の洞穴ということになっています。
 その中で安家洞、龍泉洞は国が指定する天然記念物になっており、内間木洞は岩手県が指定する天然記念物になっています。その他に岩手県内で天然記念物に指定されているところは、遠野市が指定する仙人峠の洞穴群があります。
 岩手県は石灰岩が豊富なところで、安家石灰岩以外にも、住田町〜大船渡市〜陸前高田市、および一関市(旧東山町)にも石灰石が広く分布しています。旧東山町にある猊鼻渓は石灰岩が川の浸食によってできた渓谷です。
 安家石灰岩が中生代のものであるのに対して、それより南のものは古い古生代のものと考えられています。
   安家洞  国指定の天然記念物
 所在地 岩泉町大字安家 
        安家石灰岩は岩泉町から久慈市にかけて南北60キロ、東西の最大幅4キロと南北に細長く分布し、
       日本有数の石灰岩地帯となっています。この石灰岩はおよそ1億5千万年前の中生代ジュラ紀(恐竜
       が隆盛していた頃)太平洋の海山上に発達したさんご礁が、プレートの移動運動に乗ってアジア大陸
       の東縁に衝突し、その後の地殻変動で隆起してできたと考えられています。安家石灰岩の厚さはお
       よそ700メートルで、激しく褶曲しているため、見かけはそれより厚く見えるということです。
        安家洞は、そうしてできた安家石灰岩層が、長い年月かかって雨水によって浸食されてできた洞
       穴で、2006年の調査では総延長は23.7キロに達し、日本最大の鍾乳洞であることがわかりました。
       現在公開されているのは入口から700メートルまでで、奥が深く、いまだ全貌はわかっていないとい
       うのが実情です。
        洞内は各種の鍾乳石が豊富で、すべての型の鍾乳石が見られる学術的にも価値の高い鍾乳洞
       ということです。          
    入口前の休憩所には、「安家洞平面図」が掲げられています。公開部分はほんのちょっと。
     その奥は複雑に分岐するまさに迷宮の世界です。
   安家洞は「祝井沢の穴」「底無しの穴」と呼ばれていました。龍泉洞とちがって、安家洞は
    水の流れていないところを通ります。
                  順路に沿って進んでみましょう。    クリックすると拡大できます。
龍泉洞    国指定の天然記念物
   所在地 岩泉町大字岩泉
    岩泉町には100以上の洞穴が確認されているそうですが、そのなかでも代表的なのが広く観光化され
   ている龍泉洞です。石灰岩の山である宇霊羅山の東麓に位置しています。龍泉洞は洞内に棲むウサ
   ギコウモリなどと共に、「岩泉湧く窟およびコウモリ」として、昭和13年に国の天然記念物に指定されて
   います。龍泉洞は藩政時代は、湧窟(わっくつ)と呼ばれていました。大量の清流が湧き出ていたから
   です。昭和34年から龍泉洞として一般公開を始めました。          
   龍泉洞は当初地元保存会が開発・公開の事業を始めま
  したが、その後岩泉町営となり現在に至っています。
    この洞穴は断層に沿って直線的に発達した洞穴で、
   現在確認されている部分だけで2500m以上あります。









  龍泉洞は同じく国の天然記念物
 に指定されている山口県の秋芳
 洞、高知県の龍河洞と共に、日本
 三大鍾乳洞とも呼ばれています。
 
  その龍泉洞の一番の見所は、未
 踏の奥底から湧き出る水によって
 形成される地底湖の美しさでしょ
 う。
  第3地底湖は水深98m、未公開
 の 第4地底湖は120mと、地底湖
 としては日本一の深さを誇ってい
 ます。

  青く澄み切った地底湖の美しさ
 には、誰もが吸い込まれそうな思
 いをします。透明度は41.5mで、
 世界一とも言われています。
  コウモリには果実などを食べるグループと昆虫や魚などを食べるグループがありますが、岩手県内には昆虫を食べる種だけが生息しているとのことです。コウモリがねぐらとして洞穴を利用する場合は、夜に洞穴の外で餌をとり、昼は洞穴内で休むタイプと、夏は昼も森林で暮らし、冬の期間だけ洞穴で冬眠するタイプの二通りあります。ウサギコウモリは後者の例で、ウサギのように耳が大きいのが特徴です。
 龍泉洞にはこのウサギコウモリの他に、前者に属するキクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ、テングコウモリ、モモジロコウモリの、合わせて5種類が見られるとされています。
(ウサギコウモリのイメージ)
   龍泉洞から湧き出た水は、飲料水としても利用され、清水川(しずがわ)に流れ出し、岩泉町民の生活を潤しています。
 岩泉町内から眺める宇霊羅山の眺めは石灰岩の露頭で、安家石灰岩の象徴的な光景です。
石灰岩でできた山のこのような眺めは珍しく、宇霊羅山自体が天然記念物の価値があります。
内間木洞    岩手県指定の天然記念物
   所在地 久慈市山形町小国
       内間木洞は安家石灰岩の一番北に位置する鍾乳洞で、遠島山の登山口も近いところにあります。
      ここは1962年(昭和37年)8月の調査によって全貌が明らかにされましたが、観光開発が行われて
      いないため、洞内の生物(主にコウモリ)環境は良好です。天然記念物の指定は「内間木洞及び洞
      内動物群」となっていて、コーモリも保護の対象です。
       内間木洞は一般公開されておらず、年2回(2月と7月の第2日曜日)の内間木洞まつりの時のみ入
      洞することができます。2月は洞内にできる氷筍が人気です。          
         入口の「内間木洞説明図」には「総延長6000mを超える巨大洞穴」の表示があります。
        見学できるのは図の中央部付近のみです。入口はここでは自然の姿そのままです。
          7月の内間木洞まつりの様子。入洞希望者が順番を待っています。写真向こうには
         地場産品販売の屋台、テントが並び、郷土芸能の舞台演技もあってにぎやかです。
              ヘルメットを被って、入ってみましょう。   クリックすると拡大できます。
                 鍾乳洞についての豆知識
         
      内部に鍾乳石(つららのような形をした炭酸カルシウムの沈積した塊)がみられる洞穴を鍾乳洞とい
     いますが、その多くは石灰岩が水に溶かされてできた石灰洞です。石灰岩はサンゴ・有孔虫・二枚
     貝などの殻が堆積してできます。その実体は化学反応を起してできた炭酸カルシウム結晶の方解石
     で、方解石が集まった岩石が石灰岩です。この石灰岩は雨水に溶けやすく、石灰岩の隙間に滲みこ
     んだ雨水が空洞を広げていきます。その空洞が大きくなったのが石灰洞です。ここで紹介した洞穴は
     いずれもこうしてできた洞穴です。
      洞穴は石灰岩の水が集まりやすい部分にそって溶食が進んで形成されます。これまでの調査では、
     洞穴は地層や断層の方向、特に断層に沿って発達していることがわかっています。