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アセビは岩手県内ではあまり見かけることはありませんが、スズランに似た白い花を穂のように咲かせる花が美しいので古くから盛岡など各地で庭木として植えられています。自生分布は本州(山形・宮城県以南)、四国、九州で、南の方では馴染みの樹木のようです。特に大和地方には多く
万葉の時代から親しまれてきた春の花のひとつです。
アセビはツツジ科の常緑低木植物で、全国的にも天然記念物に指定されているものは少なく、岩手県内で指定されているのは遠野市の「曹源寺のアセビ」だけです。 アセビは有毒植物としても知られ、同じくツツジ科のレンゲツツジも有毒植物として知られていることから、それらの取材で得た写真を紹介いたします。 |
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(遠野市指定の天然記念物)
所在地 遠野市上郷町板沢24地割9番地 |
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当地でアセビの自生はなく、寺の庭園(裏山斜面)に植栽されたものですが樹齢は不明との
ことです。アセビは株立ちしている姿をよく見かけますが、ここでは太い幹から多く枝分かれし
ている姿をしています。根元の直径は50センチ程あり、一般には5〜10センチ程度なのでその
大木ぶりをうかがい知れます。
花の時期(サクラの咲く頃か)を逸した訪問となってしまいましたので、あらためてその姿
を求めて訪ねることにします。 |
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アセビにしては大きな個体で、「遠野市の指定文化財」(遠野市立博物館発行)によると
根元幹囲1.15m、目通り幹囲0.82m、樹高約6.5m、枝張り6mとなっています(昭和62年指
定時)。樹皮は灰褐色で縦に割れ目が入り、少しねじれています。アセビの特徴そのもの
です。 |
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若い果実が付いているのが見えます。 |
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葉は革質で表面は光沢があります。 |
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樹冠部分がすっかり枯れて樹勢は衰えています。アセビは半日影でも育ちますが、
日当たりのよいところを好むので、斜面上方の樹木群が大きくなったことによる日照
不足が原因と思われます。 |
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(上の花の写真は平泉町の達谷窟毘沙門堂境内のアセビ)
アセビはスズランに似た白い花を穂のように咲かせます。花の色は普通
白ですが、淡紅色のアケボノアセビという品種もあります。
花言葉
「犠牲」「献身」……ギリシャ神話から
「危険」 ……全草に有害成分を含むことから
「二人で旅をしよう」……春に花を咲かせ旅心をそそる姿をたとえたもの
「清純な心」 ……白い花が清楚な印象を与えることから |
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所在地 八幡平市安比高原 |
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高原でよく見かけるレンゲツツジもアセビ同様有毒植物で、葉にアンドロメドトキン、花に
ロドヤポニンなどを含み家畜が食べないので牧場などに多いとされています。事実、安比
高原スキー場で有名になった八幡平市安比高原は八幡平の北方裾野に広がる原生林
に抱かれた広大な地域ですが、ここの牧場ではレンゲツツジの見事な群落を楽しむこと
ができます(見頃は6月中旬)。
高原での自然観賞の拠点となる「ぶなの駅」前の「中の牧場」一帯がその中心となります。 |
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よく見るとレンゲツツジ以外はほとんど見かけませんね |
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野性味あふれる大形の花で、日本のツツジの中では最も大きい花といわれています。 |
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花に見とれていると、「馬酔木はいやだじゃ、レンゲツツジもいやだ」と馬が現れびっくり仰天 |
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なるほど、レンゲツツジを残して草や葉は食べちゃうわけだ |
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あれ、レンゲツツジも食べるの? |
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馬が去った後、食べたところに行ってよく見ると、レンゲツツジではなく、
巻きついたつる性の植物の葉を食べていたようです。 |
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岩泉町早坂高原もレンゲツツジの名所 |
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こちらは咲き始め時期の訪れとなりました。枝先に集まって咲く花が蓮華(ハスの花)
を想像されることからレンゲツツジとよばれています。 |
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早坂高原では花の色が黄色のキレンゲツツジも目にすることができます。 |
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「アセビ」についての豆知識
アセビは葉にアセボトキシンという有害成分が含まれており、「馬が食べると酔ったようになる」
ことから「馬酔木」と漢字表示されています。奈良公園にアセビが多いのはシカが食べないから
で、牧場に有毒植物のレンゲツツジが多いのとよく似ています。葉を煎じて殺虫剤として活用も
されています。
日本固有とも言える木で、その花は日本人に古くから愛され万葉人はその気品を愛で「万葉集」
にも幾度となく登場しています。株立ち状になるものが多く、葉も花も枝先につくため、花期のア
セビはレースで編んだ日傘のようになります。 |
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