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ヒガン系サクラの古木が群生している水沢公園に出かけてみました。優美な数々のヒガンザクラが出迎えてくれました。水沢公園に隣接する駒形神社にあるのも含めて、ここには400本を超えるサクラがあるそうです。そのなかで300年程の樹齢を有するヒガン系サクラは120本を数えるといいます。全国的にサクラの名所といえばソメイヨシノのところが多いのですが、ソメイヨシノはシンプルな一重咲き。咲き栄えが華麗で、満開の豪華さ、散りゆくはかなさは見る者の心を打ちますが、変化に乏しく、一目見ると見飽きてしまい勝ちです。花見の宴のバックには適しているとはいえ、優雅さには欠けるきらいがあります。その点ではヒガンサクラ、特にそれが枝垂れたシダレザクラは、優美の言葉がぴったりです。
水沢公園にはエドヒガン、ベニヒガン、ベニシダレ、シロシダレなどが多く、花の形や色合い、枝ぶり、開花時期などが微妙に異なり、味わいのある趣を醸し出しています。こういうところこそ、真のサクラの名所と言えるのではないでしょうか。 |
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水沢公園は明治11年頃できたといわれますが、今と変らぬ花見の名勝だったようです。
敷地は隣接する駒形神社を含めると12万7500uにもおよぶ広大な面積を有します。敷
地内には運動場や体育館のほか、郷土が生んだ幕末の蘭学者高野長英を顕彰する記
念館などもあり、市民の憩いの場になっています。 |
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岩手県指定の天然記念物
所在地 奥州市水沢区中上野・東上野 |
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岩手県内にはここ水沢公園くらいヒガン系サクラの古木が多いところはありません。
ここにはエドヒガン60本、ベニヒガン41本、ベニシダレ14本、シロシダレ5本の古木が
数えられるそうです。 |
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公園の一角を占める駒形神社 |
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かつては国が管理した神社だけあって社殿も境内も立派なもの。紅白のサクラが実にマッチ
しています。焼石火山群の東端に当たる駒ヵ岳頂上にある駒形神社奥宮を移したもので、本尊
は馬頭観世音。周辺のサクラやマツなどの樹木は古い歴史と格式をもつ神社の尊厳を守るた
めに植えたものと思われます。 |
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「サクラ」についての豆知識
春に咲くサクラ。開花期は短く、一瞬、無数の花を咲かせ、あっという間に散ってしまいます。
そのあわただしさの中に、昔の人は常の花にはない特別の感情を抱いてきたようです。それは
現代を生きる私たちも変りはありません。花見に集まって飲食する風習は、いまも残っていま
す。サクラ以外にそのような例はあまりありません。そのサクラ、日本では6系統の原種の流れ
をくむ300以上の種類があるそうです。それは先達による、執念の研究の賜物でもあります。
平安の昔から、花の重ね具合、花の色、枝ぶり……「より美しいサクラを見たい」という願いか
ら、いろいろな品種を生み出してきたのでした。
自生しているもののなかで園芸品種のもとになっているサクラは、次の10種が基本種とされ
ています。
○マメザクラ(豆桜) ○カンヒザクラ(寒緋桜) ○オオシマザクラ(大島桜)
○カスミザクラ(霞桜) ○オオヤマザクラ(大山桜) ○チョウジザクラ(丁字桜)
○ミヤマザクラ(深山桜) ○エドヒガン(江戸彼岸) ○ミネザクラ(嶺桜)
○ヤマザクラ(山桜)
これらは花の咲き方もちがって、エドヒガン、カンヒザクラは葉の展開まえに開花します。
マメザクラ、チョウジザクラは葉の展開する少し前かほぼ同時に開花し、オオシマザクラ、カス
ミザクラ、オオヤマザクラ、ミネザクラ、ヤマザクラは葉の展開と同時に開花します。ミヤマザ
クラは葉の展開後に開花します。
これら10種の基本種とその変異(バリエーション)、およびそれらをもとに自然交配や人工交
配によって誕生したのが今日の日本のサクラということになります。昔からの多種多様な交配
の積み重ねで、その系統分類は極めて困難で、オオシマザクラとエドヒガンの自然交配といわ
れる人気品種のソメイヨシノも、厳密な立場でいえば、そのルーツの真偽のほどは明らかでは
ないといわなければなりません。ソメイヨシノの花の咲き方に関していえば、ご存知のようにエド
ヒガンと同じように葉の展開前に開花します。
園芸品種では濃紅大輪八重咲きのカンザン(関山)、エドヒガンの枝垂れたシダレザクラ、花
色の濃いベニシダレ、八重に咲くヤエベニシダレなどをよく見かけます。また珍しいものとして
は淡黄緑八重の花が咲くウコンザクラ、秋に花が咲くジュウガツザクラなどが知られています。
また植物分類上、葉っぱはサクラそっくりですが、普通見かけるサクラの花とは似ても似つ
かない花をつけるサクラがあります。ウワミズザクラ亜属のサクラで、ウワミズザクラ、シウリ
ザクラ、イヌザクラがそうです。花が穂状に咲くのが特徴です。 |
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あまり見かけない淡黄緑八重の花が咲くウコンザクラ。欧米でも人気があるそうです。
花の後半は淡いピンクに変ります。(盛岡市上田 岩手大学農学部付属植物園で撮影) |
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