エドヒガンの古木が各地で歓迎
平泉町のサクラ
                
  平泉町のサクラというとJR平泉駅と中尊寺を結ぶ旧国道4号
線のソメイヨシノの桜並木がよく知られていますが、当地では郊
外の雑木林の中に野生のエドヒガンが生育し、庭木としても広く
植栽されています。その中で6ヵ所のエドヒガンについては町が
指定する天然記念物になっており、訪れる人にその姿を見せて
くれます。
 天然記念物に指定されたのはいずれも1992年(平成4年)
で、その時点で樹齢はそれぞれ350年と推定されていますので
、もう400年近いものと思われます。花の時期に訪ねることがで
きましたのでその姿を紹介いたします。
 また達谷窟毘沙門堂の境内には樹齢450年といわれるシダレ
ザクラがありますので、訪れてみました。
 平泉町のサクラということでは「西行の桜の森」もあります。
町の東側には束稲山が見え、その前峰となる駒形峯は大文字
送り火でも知られていますが、その一帯に「西行の桜の森」が
造成されサクラの植樹が活発に行われています。やがてサク
ラの名所となることでしょう。
        6ヵ所のエドヒガン(天然記念物指定)を訪ねて回りました。
     天然記念物を訪ねる際は現地でその所在地を探し当てるのは意外に苦労するものですが、
      平泉文化遺産センターでそれをお尋ねしたところ、住宅地図にプロットしていただき大変助か
      りました。この場を借りてあらためてお礼申し上げます。平泉町のように所在地表示に詳しい
      地番まで表示されていると探しやすいので、他の市町村もそれに倣ってほしいものです。
         (高田前の)エドヒガン    (平泉町指定の天然記念物
 所在地 平泉町高田前121
     測定値 ・目通り周……約5m ・目通り径……約1.6m ・樹高……約10m ・樹齢……350年
                  地上3程まで空洞化、4mほどで4分枝、樹勢良好
              
   (「平泉町史 自然編・民俗編」より)
              (毛越の)エドヒガン   (平泉町指定の天然記念物
  所在地 平泉町毛越寺83-1
        
     測定値 ・目通り周……約4.9m ・目通り径……約1.5m ・樹高……約7m ・樹齢……350年
           地上6mほどで主木が折れているが、樹勢良好。樹幹に腐れが入っている。 
      
              (「平泉町史 自然編・民俗編」より)
        
                       (東郷の)エドヒガン    (平泉町指定の天然記念物)
  所在地 平泉町東郷32
   
         
      測定値 ・目通り周……約4.3m ・目通り径……約1.4m ・樹高……約10m ・樹齢……350年
                 主木の先端が枯死しているが、枯れる前は開花期となると見事だったという。
                 幹に着生しているシダ(エゾデンダ)は当地方では稀産種。
              
         (「平泉町史 自然編・民俗編」より)
(月舘の)エドヒガン    (平泉町指定の天然記念物)
  所在地 平泉町長嶋字月舘82
   
      測定値 ・目通り周……約4.3m ・目通り径……約1.35m ・樹高……約10m ・樹齢……350年
                  地上2mほどで2分枝、枝の先端の一部は枯死しているが、樹勢良好。
                  樹形もよし。
             
    (「平泉町史 自然編・民俗編」より)
(大平の)エドヒガン    (平泉町指定の天然記念物)
  所在地 平泉町長嶋字大平51
 
      測定値 ・目通り周……約4.2m ・目通り径……約1.3m ・樹高……約8m ・樹齢……350年
                  地上2mほどで3方に枝分かれ、樹勢、樹形とも極めて良好。
             
      (「平泉町史 自然編・民俗編」より)
(東岳の)エドヒガン    (平泉町指定の天然記念物)
  所在地 平泉町長嶋字東岳69-1
 
      測定値 ・目通り周……約5m ・目通り径……約1.6m ・樹高……約10m ・樹齢……350年
                 地上5mほどで主木が枯れているが樹勢、樹形とも良好。
                 道路舗装時に根を一部切断。一時樹勢劣るも後回復。
            
       (「平泉町史 自然編・民俗編」より)
達谷窟毘沙門堂の枝垂桜   所在地 平泉町平泉北沢16
      平泉町内にある達谷窟(たっこくのいわや)毘沙門堂境内には、樹齢450年といわれる見事な
      シダレザクラがあって、花の時期には訪れる人を楽しませてくれます。
旧国道4号線の桜並木   所在地 平泉町県道300号線(旧国道4号線)
      JR平泉駅と中尊寺を結ぶ旧国道4号線は平泉バイパス開通に伴い2015年(平成27年)
      4月に岩手県道300号三日町瀬原線となりました。この区間は約1.5キロとされていますが、
      旧国道4号開通の際に(1931年)その記念としてソメイヨシノが両側に植樹されました。
       それから90年近い年月が経ち、今では80本余のサクラが見事に連なりサクラの名所と
      なりました。
残念。訪れた時花は散っていました。満開の「桜のトンネル」観賞は持ち越しです。
花吹雪もまた風流なもの……とか負け惜しみを言って今回は退散です。
        西行の桜の森   所在地 平泉町長嶋深山95-741 
         今を去る9百年程前から80年余り、奥州藤原氏四代のもとで仏教文化が花開き、
        「みちのくの世紀」と呼ぶにふさわしい時代がありました。平泉はその中心舞台でした。
        北上川を挟んで、平泉の東側に連なって見える山々がありますが、その最高峰が束
        稲山です。標高は600m足らずで、山中には車道も通り、散策路も整備されてハイキン
        グの場にもなっています。平泉から眺めるこの山の前山一帯は、往時はサクラの名所
        だったようで、古の人たちも、この山をよく散策したことでしょう。 
       下の写真は源義経最後の地とされる「高館」から眺める束稲山(後ろのかすんで
        見える山)とその前峰の駒形峯の姿です。「西行の桜の森」は駒形峯の山頂に近い
        一帯です。山際を横切る道路が桜並木だったら、一層桜の名所にふさわしくなるで
        しょうね。
       平泉から北上川を挟んで南北に連なる山並みを東山と呼び、その頂が束稲山です。
      奥州藤原氏が平泉を開くより100年前に、当地の覇者安倍氏は東山30里の間に桜樹
      1万株を植林したと「吾妻鏡」に記されています。平泉を訪れた西行法師は、「きゝもせ
      ずたはしね山の桜花吉野の外にかゝるべしとは」と歌に詠んでその美しさを称賛してい
      ますが、現地ではそれにちなんで、「西行の桜の森」として、新たな桜の森づくりめざし
      て桜の植樹活動がすすめられています。
     「西行の桜の森」のある駒形峯からは、世界文化遺産になっている平泉の地を鳥瞰する
      ことができます。一帯の観光資源としての開発・整備が望まれます。
「西行の桜の森」にある駒形峯展望台
案内板が不十分で、辿り着くまで苦労しました。

 展望はすばらしく、立ち去り難くなります。
             駒形峯展望台から平泉の街を眺めながら思いました。古都平泉には
            サクラ(ソメイヨシノではなくエドヒガン、シダレザクラ)がぴったりだと。
            町内のエドヒガンの古木やシダレザクラの古木を観て回りその思いを
            強くします。地域のサクラ文化の創造と古くから受け継いだみちのく平
            泉文化がうまく融合するならば、平泉の新しい魅力が人々を惹きつける
            ことになるでしょう。旧国道4号線の桜並木、西行の桜の森づくりなどは
            はその具体化といえますが、今後さらなる広範な展開を期待して止み
            ません。