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岩手県下で最も大きなスギの木 |
天然記念物の指定は、「動物」「植物」「地質」に分類されて
いますが、岩手県内で指定されている天然記念物は大部分
が「植物」で、件数では全体(約450件)の90%近くを占めてい
ます。その内訳はほとんどが樹木で、多い順に樹種を並べる
と、サクラ、スギ、イチョウ、カツラ、イチイがベスト5ということ
になります。この5つの樹種で、岩手県内の天然記念物の件
数の40%余りを占めています。
サクラが多いのは、サクラを愛でる各地の人々の気持ちが
反映しているようです。スギ、イチョウ、カツラはいずれも太古
から生きてきた樹種で、樹齢が長いのが共通しています。
指定されているスギの天然記念物は岩手県内に50件近く
あり、それらをめぐり歩くのは大変なことになりそうです。先の
「白山杉」に続き、天然記念物に指定されているいくつかのス
ギを訪ねてみました。 |
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(岩手県指定の天然記念物)
所在地 陸前高田市小友町字上の坊 |
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常膳寺参道の終点右側にそそり立っています。落雷による被害や空洞・枯損枝などは
なく、樹勢は旺盛です。樹形も優れ、威厳に満ちた風格ある姿には圧倒されます。 |
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(解説板の内容)
岩手県指定天然記念物
常膳寺の姥杉
所在地 陸前高田市小友町字上の坊26
指定年月日 昭和44年6月6日
測定値(昭和45年2月測定)
根元周 10.65m 目通周 9.60m 樹高 70.00m
枝張り 32.0m(東西) 30.0m(南北)
樹 齢 1000年以上
この杉は岩手県下で最も大きい杉の木で、いたんだところがなく幹も太く
りっぱで、木の勢いも旺盛であることなどから、昭和44年6月6日岩手県教
育委員会告示3号をもって天然記念物に指定されました。
この姥杉は学術上貴重であるとともに杉の県代表ですから、みんなで大
切に保存しましょう。
昭和62年3月 陸前高田市教育委員会 |
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常膳寺観音堂(陸前高田市指定の有形文化財)
姥杉の前にある常膳寺観音堂は、解説版によると元禄9年(1696年)に再建されたとの記録があり、
造りや風蝕程度からその頃の建設と考えられています。気仙地方において現存する古建築のなか
で建築年代がほぼ確定できる最古の遺構の一つとされています。(屋根は昭和59年葺き替え)
堂内の奥には、像高3メートル余の十一面観音立像(小友観音)が安置されています。 |
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遠野市指定の天然記念物
所在地 遠野市綾織町山口 |
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熊野神社の境内に堂々とした姿を見せています。目通り幹周囲7.1m、樹高約30m、樹齢は
1500年と推定されるとのことです。側で見上げている人と比べても、その幹の太さがわかりま
す。樹勢も旺盛です。
この老杉には、昔伐ろうとしたところがこの木から出血したとか、西側に当たる幹のこぶに
かねの地蔵が入っているとの伝説があります。
(遠野市立博物館発行の「遠野市の指定文化財」による) |
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幹の東側に高さ50cmほどの金比羅大権現の石碑が立てかけて
いますが、長年のうちに幹のくぼみに食い入り、容易に引く抜くことが
できないようになっています。幹がこれを包み込んで太くなったという
ことでしょう。。 |
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(遠野市指定の天然記念物)
所在地 遠野市附馬牛町荒沢 |
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遠野市立博物館発行の「遠野市の指定文化財」によると、阿曾沼氏の所有であった文治5年
(1189年)から慶長6年(1601年)に、この地に馬産の神様として蒼前駒形神社を祀ったと伝え
られており、その頃の植樹と考えられるということです。元駒形神社に残された神木で、信仰
の対象として現在に至っています。目通り幹周5.8m、樹高約30m、樹齢は約440年と推定されて
います。
現存の駒形神社は当地よりちょっと北側にあります。 |
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(奥州市指定の天然記念物)
所在地 奥州市水沢区日高小路 |
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「火防祭」「日高ばやし」でも知られている日高神社は、社伝によると弘仁元年(810年)
創建とされる古い歴史をもつ神社です。境内の2本のスギの老木が天然記念物に指定
されています。 |
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写真の2本の姥杉が天然記念物に指定されています。 |
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(西和賀町指定の天然記念物)
所在地 西和賀町泉沢 |
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沢内街道を南下すると県道をはさんで猿沢小学校の真向かいにあります。街道沿いにあり、
周囲には大木がないのでよく目立つ一本杉です。
ここは一里塚があったところだそうで、その記しとして植えられたものと考えられています。 |
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西和賀町教育委員会発行の「にしわがの文化財」によると、高さ30メートル、
太さ(周囲)7.3メートル、樹齢340年余りと推定されています。
現地案内板には、次の沢内民話が紹介されています。
「その昔、泉太郎治という人が旅をする人の憩う木陰をつくるために植えさせ
た杉並木があり、後に次々切り倒されて、一番若い杉1本だけ残されたのが
今の1本杉である。」 |
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(紫波町指定の天然記念物)
所在地 紫波町升沢字前平17 |
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志和稲荷神社は古くから東北屈指の神社として知られています。斯波、南部両氏の崇敬を集めた
志和稲荷神社の境内にはスギの大木が群生しており、森厳な佇まいに満ちています。中でも御神
木といわれる古木は「稲荷さんの大杉」と呼ばれ、親しまれ、信仰を集めています。
この御神木は樹高35メートル、根元周囲17.45メートル、推定樹齢1000年ということですが、
樹勢の衰えが顕著です。 |
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・ 国指定の保健保安林(18.46ha)
・ 秋田県指定の史跡名勝天然記念物(18.46ha)
岩手県内では観ることができないスギの天然林が、隣りの秋田県にあるというので訪ねて
みました。秋田県能代市二ツ井町にある、「仁鮒水沢スギ植物群保護林」です。林内にある
全樹種の98%が天然生の秋田スギで、スギ純林の様相を呈しています。
ここは明治以降保護管理のための人手は加えられていますが、人為的な更新や伐採は
行われておらず、自然林として学術的価値も高いとされています。18ヘクタールある保護林
には平均樹齢250年の天然スギが約3千本林立しているということです。
その遊歩道で見られる巨木の1本は「きみまち杉」と名づけられ、樹高58メートルで、「日本
一の杉」として紹介されています。ところが最近愛知県の鳳来寺山で60メートルが計測された
スギが見つかり、その座は揺らいでいます。
現地二ツ井町では、「日本一の杉」ということでその所在地がよく案内表示されており、遊歩
道の整備や各種解説・案内も行き届き、快適な観察ができる保護林です。 |
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仁鮒水沢スギ植物群落保護林
天然秋田スギ林は、木曽ヒノキ、青森ヒバととも日本三大美林として名高く、そこから
得られる木材は慶長(1596年〜1615年)の頃から、地元はもちろん遠く京都、大阪方面
にも運搬され、建築用材などとして広く利用されました。
明治に入り国有林となってからも天然秋田スギの生産は続けられ、木材産業発展に
多大な貢献をしてきました。
この森林は、現在残された学術的には貴重な「天然秋田スギの代表的な林」であり、
昭和22年(1947年)以降、保護林及び秋田県天然記念物として保存を図っています。
場所: 秋田県能代市二ツ井町田代字田代沢国有林4林班と小班
面積: 18.46ha
指定時期: ○仁鮒水沢スギ植物群落保護林(平成5年)
(旧称:仁鮒水沢学術参考保護林(昭和22年)
○秋田県史跡名勝天然記念物(昭和46年)
林齢: 180〜300年 平均25年(推定)
林内における天然秋田スギの最大値
○最高樹高(H) 58m
○最大直径(D) 165cm
○最大材積 40立方メートル
東北森林管理局米代西部森林管理署
秋田県能代市教育委員会 |
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秋田スギとともにわが国を代表する天然スギとしては、魚梁瀬(やなせ)スギ
(高知県)、屋久スギ(屋久島)などが知られています。 |
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