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ナラカシワ北限の屈指の大木
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岩手県が天然記念物に指定する「ナラカシワ」(花巻市にあ
る)を訪ねてみました。ナラカシワは岩手の地ではあまり聞くこ
とのない樹木ですが、樹木図鑑を開いてみると、コナラ属に
「ナラガシワ」別名「カシワナラ」として載っています。分布は本
州(岩手・秋田県以南)、四国、九州、朝鮮半島、台湾、中国、
東南アジア、ヒマラヤと、広範囲にわたっています。日本では
岡山、広島、山口県など中国地方に多いようです。葉はミズナ
ラやカシワに似ていますが葉身はミズナラより大きく、カシワと
同じくらいで、葉柄はミズナラやカシワより長いとされています。
名前の通り、ナラとカシワの合いの子みたいな樹木とみていい
のではないでしょうか。
岩手県内の天然記念物記念物リストには、紫波町と遠野市
にも指定されたナラカシワがありますので、そこも訪ねてみま
した。
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岩手県指定の天然記念物
所在地 花巻市北笹間10地割 |
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盛岡和賀線(県道13号線)を南下して、清水野村崎野線(県道252号線)の交差点から左側に
少し行ったところに「北笹間のならかしわ」があります。高さがあり、枝張りも旺盛で、惚れ惚れし
た外観をなしています。家人のお話では、ごく最近まですぐ側にスギの大木が何本かあって、
一帯は暗かったそうです(撮影したのは2015年9月28日)。それらが伐られた後だったので、明る
くて伸び伸びした姿を写真に残すことができました。「いい時期に見えられた」と、家人に“ほめら
れ”ました。
解説版には天然記念物に指定された当時の計測数字が出ています。それによると根元周囲
約5m、樹高約21m、樹齢は約300年となっています。指定されてから50年近く経っていますので、
もう少し太く大きくなっていることでしょう。、樹齢も約350年といったところでしょう。
空洞もないという幹もがっちりしていて、堂々たる風格です。広い敷地内の洋館風の邸宅がぴ
ったり雰囲気にとけ込んで印象的です。 |
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紫波町指定の天然記念物
所在地 紫波町東長岡字天王14 |
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紫波町東長岡の八坂神社境内外れの斜面にあるこのナラカシワは、状況からして自生した
ものと思われます。紫波町は自生ナラカシワ分布の北限と目されることから、このナラカシワは
自生するものとしては最北のものと言われています。
天然記念物指定は昭和51年(1976年)で、根元周囲1.8m、樹高12.25mとなっています。
現在はもう少しあるでしょう。 |
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右側の斜面に見えるのがナラカシワです。 |
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ナラカシワはカシワに「似ていますが、葉の先端が急に尖り、葉柄はカシワより長い
のが特徴です(カシワの葉柄はごく短い)。また葉縁の鋸歯の先端がカシワ程尖らな
いなどの点がちがいます。
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遠野市町指定の天然記念物
所在地 遠野市松崎町白岩字畑中 |
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遠くからも目立つ大木で、ナラカシワとしては岩手県内一の太さと思われます。遠野市立博物館
発行の「遠野市の指定文化財」によると、根元周囲は6.1m、樹高15m、樹齢約400年となっています。
主幹は空洞になっているそうですが、枝葉を見る限り今なお旺盛です。
この大木には伝説があって、慶長5年(1600年)、遠野鍋倉城主、阿曽沼広長出陣留守中、一族
鱒沢左馬助に背かれ、敗北の時、阿曽沼の一族が記念に秋田からこの苗を取り寄せ植え、大木に
生長したものといい伝えられているということです。しかし当時すでに本樹が存在していたという説も
あるそうです。 |
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枝先には葉が旺盛に茂っています。 |
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紫波町指定の天然記念物
所在地 紫波町上松本五反田10 |
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このカシワは岩手県内でも十指に入るという大木で、根元から生えているオオモミジを抱えた形に
なっています。天然記念物の指定は昭和51年(1976年)で、根元周囲3.67m、樹高15.5m、推定樹
齢320年とされています。家人のお話では、かつては2本あったということです。
カシワはブナ科では最も大きな葉をつけ、枝は横に広がりがちなので、一見鬱蒼としています。
枯れた葉がいつまでも枝に残るので、縁起をかついで庭木にされることもあります。葉はかしわ餅
に使われます。 |
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一関市指定の天然記念物)
所在地 一関市萩荘字長倉70 |
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コナラは北海道南部から九州まで幅広く分布する樹種で、萌芽力が強く、一度伐採して
も根株から萌芽して、再び林を形成するほどの生命力をもっています。材としての用途も
広く、かつては薪炭材として広く使われました。現在ではシイタケやナメコ栽培のほだ木、
木炭の原木として使われています。また家具や器材用材としても使われています。
このように利用価値が高いこともあって、コナラが巨木として存在するのは珍しいことで、
多くの場合、神社の神木として保護されたものに限られています。このコナラの巨木も解
説版にあるように、御神木として所有者に大切に保護されてきています。
天然記念物に指定されたのは平成3年(1991年)で、樹齢400年程度と推定されています
が、樹勢は著しく衰え、主幹の傷みが激しくなっています。 |
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遠野市指定の天然記念物
所在地 遠野市松崎町宮代 |
遠野市街地からずっと離れた山際を探しあぐねて、やっと見つけました。ほとんど人が
訪れることのないような寂れた祠の前に、ひっそりと佇んでいました。天然記念物の指定
は昭和58年(1983年)で、目通周囲3.8m、樹高約20m、樹齢160年とされています。 |
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「山神」さまも大分くたびれているようですね。 |
真ん中に見える樹冠がコナラの木です。 |
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「コナラ属」についての豆知識
下部がお椀のような殻斗に包まれるいわゆるドングリができる樹木は、植物学上コナラ属と分類
されており、落葉する落葉広葉樹の方は「ナラ」あるいは「ナラ類」と呼ばれ、常緑の常緑広葉樹の
方は「カシ」あるいは「カシ類」と呼ばれています。前者には「コナラ」「ナラカシワ」「ミズナラ」
「クヌギ」「アベマキ」が含まれ、後者には「ウバメガシ」「アカガシ」「シラカシ」「イチイガシ」
「アラカシ」「ウラジロガシ」などが含まれます。
これらの中で岩手県に自生分布するのは「コナラ」「ミズナラ」「カシワ」「ナラカシワ(紫波町以南)」
「クヌギ(県南部」に限られています。常緑のカシ類の自生は岩手県内ではほとんど見ることはあり
ません。 |
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