荘厳雰囲気を醸す
大宮神社のモミ
 昔、「樅の木は残った」というテレビドラマがありました(1970年1月
〜12月。NHK大河ドラマ)。山本周五郎原作のもので、仙台藩のお家騒動
をバックに原田甲斐を主役にしたドラマでした。その時は仙台藩の居城たる
青葉城にモミの木があったのだなと思ったのでしたが、実は青葉城址はモミ
原生林に囲まれているのでした。仙台市の西の丘陵地にある青葉山は、樹
齢300年を超えるモミの原生林(モミ林としては北限)はじめ、常緑広葉樹、
落葉広葉樹、ユウシュンランなど多様な動植物を育む豊かな森で、森全体
が国の天然記念物にも指定されています。
 モミの自然分布は岩手県南部辺りまでのようですが、岩手県下には天然
記念物に指定されているモミが14件数えられます。それらは植栽されたも
のが多いと思われます。それらの中から訪れた4ヵ所のモミを紹介します。
    大宮神社のモミ     (盛岡市指定の天然記念物
 所在地 盛岡市本宮字大宮51
         案内板の解説によると、太さなどから推定樹齢は610年(平成8年時点)ということで、
          モミとしては岩手県下最大のものだろうということです。
                      
    華蔵寺のモミ   陸前高田市指定の天然記念物
所在地 陸前高田市小友町字門前
雷の被害を受けたのでしょうか、幹半分上はなくなっています。
       (解説版より
             モミは本州(岩手県・秋田県以南)、四国、九州(屋久島まで)の山地に生
            える常緑高木で、花は5月頃に、毬果は10月頃に成熟します。
             気仙地方はモミの自生の北限で、イヌブナとモミの混ざった植生が認めら
            れます。華蔵寺のモミはモミとしては気仙地方屈指の大木です。
             市内のおけるモミの分布については、自生の北限であるためにモミをよく見
            かける地域とほとんど見かけない地域とがあります。小友町にはモミが多く、
            いろいろな用材となるためにかなり伐採されましたが、華蔵寺のモミは寺域
            の墓地にあるので伐採されずに残ったものと思われます。
    宗松寺のモミ  (一関市指定の天然記念物)
所在地 一関市東山町字裏ノ上67
     宗松寺参道の杉並木は一関市指定の天然記念物になっていますが、このモミは参道を登った
      山門のところにどっしり構えています。天然記念物の指定は杉並木同様1980年(昭和55年)です。
      草井沢利助大モミの木   (西和賀町指定の天然記念物)
所在地 西和賀町草井沢
       西和賀町の錦秋湖に掛る天ヶ瀬橋を渡った草井沢にあるこの大きなモミの木。
        旧家の庭にあるもので植栽されたものと思われますが、雪の多いこの地方では
        稀にみる巨木とされています。この地域のシンボル的存在で、土地の古老はこ
        の大木を目印に長い道のりを歩いたということです。、
                  「モミ」についての豆知識

      モミはマツ科モミ属に属する樹木で、北海道のトドマツ、八甲田や八幡平で多くみられる
       オオシラビソ(アオモリトドマツ)などと同じ仲間です。本州、四国、九州に分布し日本固有
       種となっており、美しい円錐形の樹冠をつくります。大気汚染や暑い気候には弱い樹木で、
       寿命もあまり長くないようです(200年程のものが多いということです)。
        モミ材は建築用としてはやや耐久性が劣りますが、心材、辺材ともに白いので現代風の
       雰囲気をもっており、人気があります。また白く清浄なイメージがあって、昔から塔婆や棺
       にモミが使われてきています。
        モミといえばクリスマスツリーやドイツ民謡の「モミの木」を思い出しますが、そのモミは中
       央ヨーロッパから東ヨーロッパにかけて分布するヨーロッパモミのことで、日本のモミとは
       別種です。