盛岡は桜の都
盛岡のサクラ
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 岩手県の県庁所在地盛岡市は山紫水明に恵まれ、風光明媚を誇っています。そこに住む人たちの人情も含めて、盛岡の魅力に惹かれてそこに住むようになった人は多いようです。その盛岡は、実は桜の都でもあります。盛岡市教育委員会が発行した「盛岡地方の桜」によると、市内に知られる桜の種類は18種13変種に上り、今日日本国内で知られる代表的な野生種および昔より栽培されている普遍的品種の大部分は、現在市内各所に栽植されているそうです。
 そういうことの反映でもありましょう、盛岡市内には国が天然記念物として指定するサクラが2ヵ所あります。このようなところは全国的にあまり例がありません。また(財)日本さくらの会が全国各地のサクラの名所から選定した「日本さくら名所100選」には、高松の池がある盛岡市高松公園が選ばれています。さらに盛岡市独自でも、5ヵ所のサクラを天然記念物に指定しております。保存木に指定しているサクラもあり、盛岡はまさにサクラの見どころいっぱいです。 
 盛岡石割桜 国指定の天然記念物
 所在地 盛岡市内丸9-1
      案内板より)           石割桜
       この敷地は盛岡藩の家老であった北家の屋敷跡であり、庭石の割れ目に桜の種が飛んできて
        芽を出し、成長とともに石の割れ目を押し広げていったと言われている。石は花崗岩で周囲
        が21.0m桜はエドヒガン(花からシロヒガンともいう)で、樹齢は350〜400年と推定される。
        現在幹の周囲は4.6m、樹高は11.0m、枝張りは東西に16.0m、南北に17.1mである。
        石の割れ目は北側、南側共に少しずつ広がっている。大正9年12月、国の天然記念物に
        指定され現在に至っている。
いまでもいっぱい花を咲かせるのは、こうした丹念な雪囲いなどの手入れがあるからでしょうね。
      大きな岩の割れ目に根を下している姿には圧倒される思いがしますが、その割れ目が
       少しずつ広がっているというから驚きです。岩の割れ目に自然に生えたものと考えられま
       すが、当初は岩が土中に半ば埋もれていたのではないでしょうか。

      エドヒガンはサクラの中でも長寿といいますが、樹齢400近いというのに毎年見事な花
       を咲かせるのも健気なものです。豊香園の人たちの手によって代々手入れがなされて
       いますが、1932年(昭和7年)にすぐ側にある裁判所が燃えた時、庭師の藤村治太郎翁
       は着ていた半纏で木を濡らし、石割桜の幹にふりかかる火の粉を消したというエピソード
       もあります。この木には、この木を守ってきた庭師さんたちの霊が宿っているのではない
       でしょうか。
龍谷寺のモリオカシダレ     国指定の天然記念物
   所在地 盛岡市名須川町7-2 
          (案内板より)      龍谷寺のモリオカシダレ
     この桜は、大正9年(1920年)、国の天然記念物調査員三好学先生が龍谷寺で発見された新種で、
      エドヒガン・オオシマザクラの雑種である。樹性はシダレ性で、シダレヒガンに近く、葉形はソメイヨシノ
      に近い。裏面が殆ど無毛、子房と花柱も無毛である。平成5年(1993年)の測定によれば、根元周2.2m
      樹高6.1m、枝張り8.0m、主幹の大部分が腐朽し、辺材の一部が生きて生育を続けている。総樹齢は
      150年ぐらいといわれ、交雑種樹木の最大値に近いものと認められている。昭和11年9月3日、国の天
      然記念物に指定された。
            龍谷寺本堂裏には、ひこばえを植えた2本が元気よく咲いています
    龍谷寺本堂前の、国の天然記念物に指定されているモリオカシダレは高樹齢なこともあって弱々しい姿を
   していますが、本堂裏の2本は樹勢が旺盛です。本堂前のひこばえを植えたものだそうです。龍谷寺のモリ
   オカシダレを訪れる場合は、本堂裏にあるこちらの方も必見です。なおモリオカシダレは岩手県内では9ヵ所
   での存在が知られているということですが、そのうち遠野市松崎町のものは県の天然記念物に、また盛岡市
   北山の法華寺にあるものは盛岡市の天然記念物に指定されています。
      「日本さくら名所100選」に選ばれている盛岡市高松公園
         サクラの名所であり、冬はハクチョウの飛来地としても親しまれている盛岡市高松公園。
        現地の「高松公園由来」の案内板には次のように記されております。
                         高松公園由来
         高松の池は今から380余年前盛岡城下創建の際最初に造られた堤である。盛岡城築城
        以前は上田沼と称され、上中下の三段になっていた。小沼には雑魚が多く、冬から春にか
        けて鶴、雁、鴨などが群棲し、また芹、じゅん菜、蓮などが生い茂る湿原地になっていた。
         明治22年盛岡市が市制施行となると上田堤の公園化が進められ同39年には日露戦争
        記念事業として吉野桜数百本が植えられ、盛岡市の名所となった。大正の中頃、当時の
        市長北田新氏によって更に公園の築庭整備がなされ、名称を「高松の池」と改められた。
         昭和24年に「市立高松公園」に指定され、更に平成2年4月「日本さくら名所100選」に選ば
        れ、四季を通じて市民の憩いの景勝地となっている。       
                高松公園(風致公園) 面積44.3ha


          ※ちなみに岩手県内で「日本さくら名所100選」に選ばれているところは、外に北上市の
            北上市立公園展勝地があります。隣の秋田県では、秋田市の千秋公園、横手市の
            真人公園、仙北市の桧木内川堤・角館武家屋敷が選らばれています。青森県では
            弘前市の弘前公園と五所川原市の芦野池沼群県立自然公園が選ばれています。
               国の天然記念物に指定されているサクラについて

         国の天然記念物とは、学術上価値の高いものとして、その文化財を国が保護する目的で指定
          するものですが、特に重要な文化財に関しては、特別天然記念物として指定されます。現在国
          の天然記念物に指定されているサクラは40ヵ所程あって、そのうち2ヵ所は特別天然記念物に
          指定されています。種類別にみると厳格な区別が難しいものもあるようですが、エドヒガンと
          ヤマザクラが多く、それぞれ12ヵ所、11ヵ所となっています。その他シダレザクラが4ヵ所、
          オオヤマザクラが3ヵ所で、フユザクラ2ヵ所、オオシマザクラ、カスミザクラ、カンヒザクラが
          それぞれ1ヵ所となっています。園芸品種一般を指すサトザクラは5ヵ所指定されています。
           東北地方では8ヵ所指定されていて、盛岡市の2ヵ所以外では、角館のシダレザクラ
          (秋田県大仙市)、塩竈神社の塩竈ザクラ(サトザクラ:宮城県塩竈市)、南谷のカスミザクラ
          (オオヤマザクラ:山形県鶴岡市)、伊佐沢の久保ザクラ(エドヒガン:山形県長井市)、三春
           滝ザクラ(シダレザクラ:福島県田村郡)、馬場ザクラ(エドヒガン:福島県安達郡)となって
          います。