なかなかの迫力
勝源院の逆ガシワ
 盛岡市から国道4号線を車で南下すると、紫波町日詰のまちに入ろうとする
ところで、右手に曹洞宗の寺院・勝源院があります。入母屋瓦葺の山門をくぐ
り本堂の裏庭園に回ってみると、そこには国が指定する天然記念物の逆ガシ
ワ(さかさがしわ)があります。
 このカシワの老大木は推定樹齢は300年ということですが、主幹が地上に出
たあと、4本の支幹に分かれ、それぞれが地面を這うように伸びています。そし
て這うように伸びた後に立ち上がるという異形をなしています。本来カシワは
幹が垂直に伸びて枝を張るという樹木なので、たしかに不思議な光景です。
支幹の一部が台風で折損したそうですが、樹勢はいたって旺盛のようです。
日当たりのいいところを必要とするカシワなのに、ここでは日陰模様の寺の裏
庭で、隆々と生育している……これまた不思議なことです。国道寄りにあるこ
ともあってしばしば寄りますが、季節季節、ちがった表情を見せてくれます。        
(国指定の天然記念物   所在地 紫波町日詰字朝日田23 勝源院境内) 
芽吹きもまぢか……4月下旬
旺盛な若葉の表情……6月上旬
            根が枝になったように見えることから「逆(さかさ)ガシワ」の異名がついたようです。
                 (クリックすると拡大できます)
       5月節句の「柏餅」。この時期にお目にかかるカシワの葉。それも関東・東北地方の話で、
        西日本ではサルトリイバラの葉を使うそうです。カシワは本来寒い地方に生育する樹種で、
        その分布が関係しているものと思われます。本来はどちらも山で採った新鮮な葉を使って
        いましたが、新暦の5月節句ではまだ葉が小さく、いまでは6〜7月の葉の伸び切った頃に
        採取し、蒸して陰干しして使うようになっています。
                雪で薄化粧……12月下旬
                   「カシワ」についての豆知識
     カシワはブナ科コナラ属の樹木で、樹高15m直径60cmほどになる落葉高木です。枝が横に広がり
      粗い感じのする樹形となります。ブナ科のなかでは最も大きな葉となり、枯れた葉はなかなか落ちず、
      木によっては春先まで残るものがあります(勝源院のものはほとんど残っていませんね)。縁起がい
      いということで庭木などにも使われます。
       樹皮は厚く、火に強いのが特徴で、山火事がしばしば起きる地域ではカシワが多く見られます。ま
      た根は地中深く入り込み、乾燥にも強いため、乾いた尾根などに生える特質もあります。
       カシワは重く、節や曲がりが多く、家具にはほとんど使われません。かつては樹皮からなめし皮用
      のタンニンを採取しましたが、多くは薪炭用として利用されてきました。これらの用がなくなった現在
      では、パルプ以外はあまり利用されることはありません。