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夏の暑いさなか、寺の境内などで紅色に咲き誇るサルスベリを
よく目にします。他の花がほとんど終わったこの夏の時期に、樹冠
いっぱいに鮮やかに咲くので、非常に目立ちます。
陸前高田市米崎町にある普門寺のサルスベリは、岩手県の天然
記念物に指定もされているというので、花の時期に訪れて観賞して
きました。普門寺には同じく県の有形文化財に指定されている三重
塔もありますが、幸い普門寺は山手の高い方にあって、東日本大震
災の際の大津波の被害を直接的に受けなかったのは何よりでした。
陸前高田市は文化財のまちと言えるほどで、「陸前高田市立博物
館」、「陸前田市立図書館」、「陸前高田市海と貝のミュージアム」、
「陸前高田市埋蔵文化財収納庫」、三閉伊一揆に縁のある「吉田家
住宅」などには、重要な文化財や資料が収蔵され展示されていまし
た。それらの多くが大津波により、流失や海水損を受けてしまったこ
とは非常に残念でなりません。その再生をめざす取り組みも進めら
れていますが、大きく前進してほしいと願って止みません。 |
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岩手県指定の天然記念物
所在地 陸前高田市米崎町字地竹沢 |
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樹齢350年余りの老杉が構える入口から普門寺の参道に入っていきます。 |
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寺の建物では一番古いとされる代門をくぐって行きます(享保10年(1725年)建立)。 |
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杉並木の厳かな参道を進んでいくと、本堂前のサルスベリが見えてきました。 |
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花は盛りは過ぎたようですが、十分その美しさを楽しめます。 |
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普門寺の佇まい |
普門寺は古くは海岸に近い方で臨済宗の寺として創建されたとされ、一時廃絶
されたのを永正元年(1504年)に米ヶ崎城主によって現在地に再建され、曹洞宗
に改めたといいます。
2011年3月の東日本大震災の大津波被害の際は、宗派を超えて多くの亡くなっ
た人たちの慰霊、供養に臨んだと報じられました。 |
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本堂は天正19年(1591年)と慶応3年(1867年)に大火に遭っており、現在の本堂は
明治10年(1877年)に再建されたものといいます。本堂入り口の向拝など趣向を凝ら
した造りになっており、気仙宮大工の面目躍如たるものがあります。 |
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本堂裏手には三重塔があり、これは文化6年(1809年)建立されたもので、繊細優美な
意匠で統一され、江戸時代から活躍した気仙大工の粋を集めた傑作の1つとされていま
す。岩手県の有形文化財に指定されています。塔の脇には享保3年(1718年)建立と伝
えられる青銅づくりの大仏が鎮座しています。像高約5mで、東北では稀有のものとされ
ています。 |
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写真撮影 岩手大学植物園(盛岡市上田) |
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シロバナサルスベリともいわれています。花はやや大ぶりのようです。紅花にはない楚々とした風情が感じられます。 |
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写真撮影 盛岡市下厨川鍋屋敷内 |
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淡いピンクのサルスベリも見かけます。よく見るとサルスベリの花弁は6個で、
しわが多いためフリルのように見えて愛らしい形をしています。 |
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「サルスベリ」についての豆知識
サルスベリは中国南部原産の落葉小高木で、大きいものは高さ10m、直径30cm程になります。
中国では官邸に植える花として尊重されているということですが、寿命が長く、暑い盛りに生命力
豊かに次々に咲き競う姿に、栄華を願う心を託したものと思われます。
日本には江戸時代初期に渡来したようですが、中国にならい神社や寺院の境内によく植えら
れています。花や樹形が美しいため、庭園樹として好まれるほか、街路樹や公園樹としても植
えられています。
「サルスベリ」の名はその木肌からきており、樹皮は淡紅紫色でなめらかで薄く剥げ落ち、淡い
色の木肌が現れます。ツルツルしてまさにサルも滑り落ちてしまいそうに見えます。またこの樹
種は春の芽出しが遅く、秋の黄変、落葉が早いので、「なまけの木」の名もついています。花や
樹形の美しさにしては、どちらもユーモラスな名前ですね。
また花は一日花でポタポタ落ちていきますが、枝先から次々蕾が咲いていくので、花は絶える
ことなく長く咲き続けます。夏場に百日近く咲き続けることから、「百日紅(ヒャクジツコウ)」
とも呼ばれ、その名もよく使われます。花の色は写真で見るように、紅色、ピンク、白、を見かけ
ますが、紫紅色のものもあるようです。
材は緻密で重く、床柱などの他、工芸品にも利用されています。 |
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