樹齢1000年に近い巨木残存
霜畑のケヤキ群
 扇形の樹形が美しいケヤキ。深く根を張る性質があるので風に
強く、すっくと立ち上って大きな樹冠をつくります。街路樹や神社の
境内、公園などでよく目にしますが、春の芽吹き・新緑、夏の深緑・
緑陰、秋の黄葉、そして冬枯れの木立と、四季折々に美しい表情
を見せてくれます。
 ケヤキは本州、四国、九州に広く分布し、各地に天然記念物に
指定された巨樹や名木が見られます。岩手県においても、県が
指定する「霜畑のケヤキ群」はじめ、市町村が指定するものが随
所に見られます(盛岡市、紫波町、花巻市、北上市、陸前高田市、
久慈市、軽米町、一戸町など)。
 ここでは久慈市の「霜畑のケヤキ群」および、盛岡市の「宰郷の
ケヤキ」、そして軽米町の「役場のケヤキ巨木林」を紹介します。
      霜畑のケヤキ群   (岩手県指定の天然記念物
 所在地 久慈市山形町大字霜畑16-8
        かつての九戸郡山形村。いまは久慈市と合併して久慈市山形町となっていますが、そこを流れる
       遠別川中流部に位置する霜畑神社に、大きなケヤキがあります。それらは岩手県内では樹高第1位、
       樹齢第1位、第2位、第3位の最大級のケヤキ群でしたが、1983年(昭和58年)8月に1本が倒木し、
       現在残っているのは神社横と裏にある、2本のみです。記録によると、かつては神社は4本の大ケヤ
       キに囲まれていたそうで、1972年(昭和47年)にも1本倒壊しています。4本に囲まれていた時代は、
       ケヤキ群と言うにふさわしい雰囲気を醸していたことでしょうね。
      これが神社横にある巨木。
    樹齢は天然記念物指定時点(昭和55年)
    で940年と推定されていますので、ほぼ
    1000年に近いと推定されます。
      これは神社裏にある巨木。
     樹高は神社横のものよりやや高く
     37mとなっています。樹齢は推定
     約800年。どちらも元気に見えます。
  
    (碑石に刻まれた欅のつぶやき)

        欅のつぶやき

 私の名は霜畑八幡宮の大欅です。平安末期に生まれ、
 年齢八百年以上です。私の少年期は鎌倉時代、青年期
 は室町時代、江戸時代三百年は壮年期でした。
  そして明治の文明開化から、自由・民主の大正・昭和
 にかけて老年期を迎えました。いま私の背丈は37m、胴
 回り8.7mの老大木になりましたが、この間、世の栄枯盛
 衰、治乱興亡の幾星霜をみてきました。
  私たちは村人に愛され神々に守られて生き延びてきま
 したが、先年(昭和47年)弟分の大欅が突然倒れて、こ
 の世を去りました。いま兄弟3本あるのが、せめてもの
 慰めです。
  このたび私たちは「天然記念物」として、山形村の文化
 財指定を受け栄誉に輝きました。生きていてよかったと
 喜んでいます。私たちは体に気をつけてさらに長寿を重
 ねたいと願っています。お守り下さい。

              昭和52年3月14日



(※岩手県の天然記念物に指定されたのは昭和
 55年3月4日。現存するには前述の通り2本です)

 
    宰郷のケヤキ  (盛岡市指定の天然記念物)
  所在地 盛岡市上太田細工4
         盛岡市上太田にある「けやき荘」敷地内にある大きなケヤキ。美しい樹形を成しています。
        この土地はかつて豪農宰郷(佐々木家)のあった宅地内に当たり、名前の由来となってい
        ます。県下では霜畑のケヤキ群に次ぐケヤキの老木のようです。近づくとその太さに圧倒
        されてしまいます。
   


      盛岡市指定天然記念物

   1.名  称    宰郷のケヤキ  1本
    2.所在地    盛岡市上太田細工4
    3.指定年月日 昭和47年11月22日
    4.説 明
   ケヤキはニレ科に属する落葉高木で、元来青森県
  以南の低い山地に生育し、寿命が長く、所々に大木
  があることが知られている。材質がかたく、湿度に耐
  えるため、古くから建築材として珍重されている。
   このケヤキは根元3.8m、目通り周囲6.8m、樹高30
  mで、樹齢約650年と推定され、岩手県内でも上位に
  位置する大木である。
   当初は江戸前期の天和年間の頃、丹波より移り住
  んだといわれる豪農佐々木家(屋号=宰郷)の屋敷跡
  でケヤキも当家の屋敷林として長く保存され、この地
  域を代表するシンボルとして親しまれ現在に至ってい
  る。   
                  平成14年8月
                 盛岡市教育委員会
役場のケヤキ巨木林    (軽米町指定の天然記念物)
     所在地 軽米町晴山10-85
          軽米町の役場に行くと軽米城の堀跡に沿って生育するケヤキの巨木林があります。
         岩手県内屈指のものとして、1996年(平成8年)に軽米町の天然記念物に指定されて
         います。
                    ケヤキの豆知識

      ケヤキは別名ツキともいわれ、日本の代表的な落葉高木の1つです。本州、四国、九州に分布し、北
       海道では同じニレ科に属するハルニレが多いようです。ケヤキは東日本の気候が適しているようで、樹
       齢数百年の古木は関東、中部〜東北地方に珍しくはありません。東京周辺にはケヤキが多いのですが、
       もともとの自然林が一部残っていることに加えて、江戸の昔からその材を船材や橋桁に用いたり、枝を
       海苔養殖の粗朶に用いたりする有用な樹木として、幕府が植栽を奨励したこともあります。
        生長が早く、深く根を張る性質があるので風に強く、公園や街路樹などに多く植栽されてきています。
       古くは屋敷林、神社境内などでも多く植えられ、各地で巨木になっているのも多く見られます。
        材は木目が美しく、強靭で狂いがないので、家具類や器具材(お盆、漆器の木地、楽器など)、彫刻材
       として重宝されています。特に和太鼓の材としては最高のものとされ、使用年数が重なれば重なるほど
       ケヤキを素材とした和太鼓は品のよい色つやが出てきます。また奥州市江刺地方の名産品として有名
       岩谷堂箪笥は、北上山系から得られる樹齢300年以上のケヤキを素材とし、それに漆を施し、手打ち金
       具は南部鉄器を使い、中はキリ材を使うなど、まさに岩手の自然と歴史から生み出されたすぐれた伝統
       工芸品です。