北限の稀少樹種越中畑の サクラバハンノキ群落  サクラバハンノキ。サクラのような葉をしたハンノキだなと頭に
浮かびますが普段目にすることも耳にすることもない樹種の
名です。そのサクラバハンノキの群落が西和賀町の天然記念
物に指定され、越中畑にあるとリストに載っているので訪ねて
みました。
 西和賀の湯の華会発行の「にしわがの文化財」によるとこの
「越中畑のサクラバハンノキ群落」はサクラバハンノキの自生
地としては北限のもので、保護上重要な危急種に位置付けら
れている植物であるために指定されたとされています。
 現地を訪ねどこにあるのか探しあぐねていたところ、たまたま
お会いした人がその土地の所有者で所在地を教えていただく
幸運に恵まれました。
 お話では一帯は湿地帯をなしていて、近くで秋田自動車道工
事があった際に掘り出された土砂を運んで埋め立ても考えられ
たそうですが、町からここは貴重な植物があるということでストッ
プの指導を受け、結果的に群落の保護につながったようです。
 町では1997年(平成9年)9月19日天然記念物に指定し、
行政的保護措置がとられるようになりました。
越中畑のサクラバハンノキ群落     西和賀町指定の天然記念物
    所在地 西和賀町越中畑
          サクラバハンノキ自生地としては北限で、約5.5ヘクタールという国内では
            最大級の面積に500本以上が群生しています(「にしわがの文化財」より)。
                 葉の表面は光沢があります
       確かに葉はサクラに似ていますね。葉先は尖り、よく見るとふちに鋸歯があります。
          樹皮はなめらかでここでは灰白色をしています。灰褐色のところもあるようです。
                   サクラバハンノキの豆知識

         サクラバハンノキについては「林木育種センター研究報第20号」に各種情報が載っており、
          以下は主にそこで得られた情報によります。
           サクラバハンノキはカバノキ科ハンノキ属に属する落葉性小高木で、日当たりのよい湿地
          (湧水湿地であることが多い)を好んで生育し、日本および中国南東部に分布しています。
          日本ではごく少数の集団が岩手県西和賀町を北限として(1996年確認された)、本州の
          各地そして九州の宮崎県を南限として隔離分布しています
              (日本では13県で確認されているとのことです)。
           湿地帯を好むという特質があり、生育地の埋め立て、土地開発、水田化のために集団数は
          減少し、環境省によって「準絶滅危惧」にランクされています。越中畑の群落に対する保護措
          置の強化が望まれるところです。
           なお中国では建築用材、家具、水桶に、また低湿地の重要造林樹種、庭園木としても利用
          されているとのことです。