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香りがいい イワテヤマナシ
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日本の栽培ナシの原種とみなされているヤマナシ。一般に見かけることはあまりありませんが、このサイト「岩手県内の天然記念物一覧」に掲げているリストで「ナシ」をチェックしてみますと、天然記念物に指定されているものには次のようなものがあります。
葛巻町「宝積寺のタネナシ」(イワテヤマナシ)
花巻市「内室堤のイワテヤマナシ」
奥州市「真打のミチノクナシ」(イワテヤマナシ)
遠野市「又五郎ナシ」(中国産とも本邦中部以南ともいわれる野生種)
九戸村「頭無のヤマナシ」
これらを訪ねてみましたが、「宝積寺のタネナシ」と「又五郎ナシ」は現存しませんでした。日本のナシのルーツを探る上で特徴ある貴重な存在だっただけに残念なことです。「内室堤のイワテヤマナシ」と「頭無のヤマナシ」は現地で取材できました。また「真打のミチノクナシ」はまだ訪れていませんので、取材が出来次第追加で掲載いたします。
ヤマナシは各地で次第になくなって、絶滅危惧種になっているようです。現存のもので然るべきものについてはぜひ保護・保存の措置を講じてほしいものです。また植樹活動も活発にして、こうした野生種の種の保存に努めたいものです。 |
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(花巻市指定の天然記念物)
所在地 花巻市轟木19地割149番地 |
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内室堤は田園地帯にあり、内室堤公園が地図にも出ていますので比較的容易に現地を
訪れることができました。正確な地番表示がわかるとナビゲーション機能を使って探し当て
易いので、天然記念物の所在地地番表示はぜひしっかり表示してほしいものです。 |
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現地には写真入りの立派な解説版がありました。思わず拍手しました。 |
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イワテヤマナシについてわかりやすく解説しています。花の姿を紹介しているのがいいですねえ。
訪れたのは8月下旬ですが、おかげさまで花の姿も観賞できました。 |
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花の姿(解説版の写真より) |
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幹周囲は4メートルを超えるのですねえ。がっちりとして存在感があります。 |
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たわわに実るイワテヤマナシの実。直径は3センチ程度の小さな実
です。イワテヤマナシの実はヤマナシよりも香りがいいと解説されて
います。
花巻に生まれ育った詩人で童話作家・思想家の宮沢賢治の作品に
「やまなし」という題の童話があります。谷川の底の蟹のきょうだいが
見る生きものたちの世界を描いた珠玉のような短編童話ですが、その
中でヤマナシが流れてきて水の中はいい匂いでいっぱいになったとい
う場面が登場します。「いい匂い」という言葉が何回も出てくるところを
みると、このヤマナシはイワテヤマナシのようです。 |
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なるほど果実頂部に萼片が残っています。
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下の写真がヤマナシの果実 |
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ヤマナシは果実頂部に萼片は残らない(写真は「六甲山の花紀行」より) |
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(九戸村指定の天然記念物)
所在地 九戸村戸田頭無 |
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九戸村に頭無のヤマナシがあるというので訪ねてみました。「頭のないナシ」とは
どんなナシかと、当初面食らいましたが、「かしらなし」という地名でした。ここは探し
当てるのに苦労しました。
樹齢はわかりかせんが、樹勢は旺盛でその枝ぶりといい風格満点は満点です。
ヤマナシここにありといった感じです。九戸村による天然記念物の指定は比較的
新しく2003年12月24日となっています。 |
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頭無集落の最奥の家の後ろの傾斜地にありました。下草を刈っておられたので
白く見える表示板が目印になりました。家人の承認を得て近寄って撮影です。
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どっしりして堂々たる風格です。根元付近の狭まりが気になりますが
樹勢に影響はないようです。 |
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今年は実はあまり付いていません。ここで見る限りちょっと怪し気ですが果実頂部に萼片は認められません。 |
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所在地 八幡平市古屋敷 |
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七時雨山に出かけた際に目にした、純白の花が樹冠をおおっているヤマナシの姿を紹介します。
この素朴で牧歌的な田代平高原の眺めは人々の心を離しませんが、時代の流れと共にその光景
は変化しているようです。この写真は1989年5月下旬に撮ったもので、それから30年近い年月が
過ぎてしまいました。このヤマナシがまだ存在しているか、それは確かめておりません。 |
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七時雨山をバックに、草原に何やら白っぽいものが見えます。何でしょう。 |
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樹冠いっぱいに白い花が咲いています。 |
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花の美しさに見とれると共に、旺盛な活力に圧倒される思いです。 |
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花の直径は3センチ程。ヤマナシにまちがいないようです。 |
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「ヤマナシ」についての豆知識
ヤマナシはナシ(ニホンナシ)の原種とみられている品種で、本州、四国、九州、朝鮮半島
南部、中国に分布しています。日本のものは古い時代に中国から渡来したという説もありま
すが、多くは人家の近くに限られることから、栽培したものが野生化したという説には頷ける
ものがあります。しかし山地でも見かけるということで、それに疑問を投げかける説もあり、
現段階では一概に中国から渡来したとは断定できないものと思われます。
イワテヤマナシはヤマナシの変種で、本州の東北地方から中部、北陸、山陰地方に分布し
ています。果実は褐色に熟し、頂部に萼片が残るのが特徴です。
ナシ属の植物は世界に約20種分布しているそうですが、果樹として栽培されているのはナシ
(ニホンナシ)、チュウゴクナシ、セイヨウナシの3種です。日本の栽培ナシはニホンナシが大部
分で、セイヨウナシの栽培面積はわずかに過ぎず、チュウゴクナシの経済栽培はみられませ
ん。
そのニホンナシは中国からの渡来問題はさておき、いずれにせよ原生するヤマナシから改
良された栽培品種の総称で、韓国や中国でも栽培されています。明治時代後半から長十郎
と二十世紀の2大品種の時代が続きましたが、現在では甘く果肉がやわらかい幸水、新高、
豊水などの品種が多く栽培されています。 |
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