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単純群落の見事な花園 |
カキツバタ、ハナショウブ、アヤメ、アイリスなどは似
たよう な花々で、アヤメ科アヤメ属の仲間です。アヤメ
属は北半球の温帯に約2000種も分布していますが、日本
には6〜7種自生しているということです。その中でカキツ
バタ、ハナショウブ、アヤメはなじみが深く、古くから親しま
れてきました。
沼沢地や湿地に咲くカキツバタに対して、園芸品種ハ
ナショウブの原種となっているノハナショウブは湿地を好
みながらも乾いた林地などにも生育し、アヤメは乾燥した
畑地や草地、また傾斜地などに生えるという特徴をもって
います。
扱いやすいということもあって、アヤメの名所は各地に
みられますが(岩手県内では平泉・毛越寺大泉池ほとりの
アヤメが有名)、カキツバタの名所はあまり見かけません。
岩手県の天然記念物に指定されている盛岡市山岸にある
「山岸のカキツバタ群落」は、そうした数少ないカキツバタ
の名所の1つです。
また、ハナショウブは 日本原産のノハナショウブを改良
した園芸種ですが、いまでは自生のノハナショウブを見かけ
ることはほとんありません。国が天然記念物としている花巻
市西宮野目にあるノハナショウブの群落(花輪堤のハナショ
ウブ群落)は、北限のものとして貴重な存在です。
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(岩手県指定の天然記念物)
所在地 盛岡市山岸大平 |
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カキツバタは挺水植物で、浅水で生活し、根は水底に存在し茎・葉を高く水上にのばす
植物です。江戸時代から盛岡はカキツバタの原産地として有名であったと言われていま
す。ここ盛岡市山岸大平のカキツバタ群落はかつては隆盛を誇ったようで、1936年(昭和
11年)には国の天然記念物の指定を受けています。この群落は盛岡市街地から行くと道
路のすぐ左手にあり、外周は整備されて水がうまく流れるようになって管理されていますが、
ここは、もとは今とは反対側に県道が通っていて、広い低層湿原のようすをしていました。
しかし水源を無視した道路工事や管理不十分なこともあって、湿原は水不足となり、ヨシが
すさまじい勢いで繁殖し、カキツバタは絶滅寸前まで追い込まれてしまいました。そのよう
なこともあって、1956年(昭和31年)には格下げされて、国の指定から岩手県指定の天然
記念物になったという経緯があります。
1967年(昭和42年)頃、盛岡市の行政主導のもとに、地元の人たちの尽力で、ヨシを排除
して今日のカキツバタの純群落が形成されました。いまも手入れは大変でしょうね。 |
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所在地 盛岡市尾入野 |
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天然記念物にはなっておりませんが、カキツバタの名所ということで、盛岡市西方に
ある御所湖付近にある尾入野湿生植物園を訪れてみました。
植生されたもので自生するものではないようですが、群落の規模は大きく、野趣豊か
なカキツバタ群落とその姿を楽しむことができます。 |
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(国指定の天然記念物)
所在地 花巻市西宮野目 |
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ハナショウブは初夏の日本の名花ですが、野生のノハナショウブを改良してできた
園芸種です。そのノハナショウブの群落が花巻市西宮野目にあり、国の天然記念物
にも指定されているということで、期待して訪れてみました。花の時期は6月下旬〜7月
上旬ということで、訪れたのは7月上旬のことです。
現地ではがっかりです。植生保護のため、一般の人は近寄ることはできず、指定さ
れた土手から遠く対岸を眺めるだけです。望遠鏡か双眼鏡がないと、その様子さえ見
ることはできません。しかも、いくら探しても群落のようなものは見つからないのです。
訪れたその時は、湿原の中で管理・保護員とみられる人が作業をしておりましたが、
辛うじてその人の側で、ノハナショウブと思われる株を認めることができました。
花巻空港の西側にあって、東北本線のすぐ側にある花輪堤。地元の人たちが○○堤
といっている沼の1つですが、一帯の大小の池沼は、北上川やその支流の川の跡や沢
に水が貯まってできたものと思われます。それらは長い年月のなかで、土砂の流入や
水田づくりなどで、絶えず環境は変化してきたことでしょう。ここ花輪堤も、そうした変化
によって、水湿不足、ヨシの繁茂という事態が過去にもあり、専門家や地元の人たちの
努力によってノハナショウブ群落を守ってきた経緯があるといいます。今回見た限りでは、
現在も絶滅の危機にあるのではないでしょうか。ノハナショウブの北限自生地として、
ぜひきちんと保護してほしいものです。 |
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向こうの湿原や周辺にノハナショウブ群落があるようですが、指定された
この土手から眺めるだけです。湿原中ほどに人がいて、何かをしてるようで
す。何をしているのでしょう。 |
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一般の人は入れないところで何かやっている……。保護員か研究員の
ようですね。双眼鏡でのぞくと、ノハナショウブの株を調査・観察している
ようです。双眼鏡でずっと湿原や周辺を見渡してみますが、ノハナショウ
ブの群落のようなところを見つけることはできません。所々に、数本の株
が集まったところを2〜3ヵ所見かけるだけです。 |
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許可された見学地点の土手周辺には、見学者へのサービスと思われるノハナショウブの株が
何本か植生されています。おかげでノハナショウブがどんな花か観察できます。 |
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案内板には、「指定地域への立ち入り禁止」が告げられています。
湿原に近寄ってみることはできません。 解説は次の通り。
国指定天然記念物 花輪堤ハナショウブ群落
昭和10年4月11日指定
所在 花巻市西宮野目第5地割
面積 16,700u
ハナショウブは通常水辺や水中に栽培されますが、自生のノハナショウブは
水流のある高原や湿地はもちろんですが、まったく水気のない乾いた林の中
や路傍などにみることができます。
ノハナショウブは6月下旬から7月上旬のころにみられ、色は紅紫がふつうで
すが、まれに白い花もあります。
この花輪堤ハナショウブはノハナショウブの北限の代表的な群落で、紫、青色
を帯びた紫・赤味がかった紫などの色の変化に富んでいることと奇形花の出現
で知られています。このような貴重なノハナショウブを保護するために環境整備
につとめていくことが大切です。
同じ頃に国の天然記念物に指定されているハナショウブには三重県多気郡明
和町東野にあるハナショウブ群落、そして鹿児島県姶良郡栗野町木場にあるハ
ナショウブ自生南限地帯があります。
貴重な天然記念物ですので、指定地区内に入ったり、植物採取することは法
律で禁止されています。
平成7年8月
花巻市教育委員会
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(碁石海岸は国指定の名勝及び天然記念物)
所在地 大船渡市末崎町大浜 |
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大船渡市の名勝、碁石海岸の碁石岬からえびす浜の遊歩道沿いに、ノハナショウブが
咲き始めたというので訪れてみました。7月上旬のことです。
なるほど、岬の高台にある遊歩道ですが、道の周辺では、花びらの基部に黄色の紋を
もつノハナショウブが歓迎してくれました。ここでは近寄って、存分に観察できます。 |
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碁石海岸の遊歩道を歩いていくと、マツ越しに見える向こうの島に、
ウミネコがいっぱい見えます。小さな島ですが、繁殖地になってい
るようです。 |
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岩手県内では下記のところが、ウミネコの繁殖地として天然記念物に指定されています。
○国指定の天然記念物 「椿島のウミネコ繁殖地」 所在地: 陸前高田市広田町字集
○岩手県指定の 〃 「佐賀部のウミネコ繁殖地」 所在地: 宮古市田老字向山 |
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カキツバタ
花弁の基部から中央にかけて
白い線が見られるのが特徴。
○日当たりのよい池沼の浅い
水中に 生息する。
○原産地は日本、朝鮮半島、
シベリア。
○花言葉
・「幸福はきっとあなたのもの」
・「幸運は必ずくる」 |
ハナショウブ
花弁の基部に黄色の紋がある
のが特徴。
○湿地にも水気のないところでも
生育する。葉の中ほどに中肋
という隆起がある
(カキツバタ、アヤメにはない)。
○原種のノハナショウブは日本特産。
○花言葉
・「忍耐、あなたを待っています」
・「あなたを信じます」 |
アヤメ
花弁の基部に網目模様がある
のが特徴。
(網目模様があるのはアヤメだけ)
○日の当たる畑地、草地を好む。
○原産地は日本、朝鮮半島、
中国東北部、シベリア
○花言葉
・「よい便りを待っています」
・「神秘な人より便り」 |
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