無数の幹が枝のように広がる夏屋敷のキャラボク  盛岡市で天然記念物に指定されているキャラボクがあるという
ので訪ねてみました。広い屋敷の庭木となっているもので、端正
に刈り込みされた姿で迎えてくれました。一見イチイと区別つき
ませんが、刈り込みされた中をのぞいて頷けるものがありました。
 岩手県内には天然記念物に指定されているイチイ(別名オン
コ、ウッコ)は多くありますが、その変種とされるキャラボク
で指定されているのは2件だけです。
   夏屋敷のキャラボク    盛岡市指定の天然記念物
   所在地 盛岡市黒川18地割33番地 
         きれいに刈り込みされて、大きなドーム状に見えるキャラボクの大木。何代にわたりよく
        手入れされ管理されてきた様子が伝わってきます。緩斜面に広がり立体感のある庭園も
        見事です。
近付いて葉を見ると、たしかにイチイそのものです。
        樹冠の隙間から中をのぞいて見るとご覧の通り。幹が無数に枝分れして、
         どれが主幹か分かりません。外観からは想像できない枝分けれの密度です。
   (案内板記載内容)      盛岡市指定天然記念物
            1.名 称     夏屋敷のキャラボク
               2.所在地    盛岡市黒川18地割33番地
               3.指定年月日 昭和48年7月30日
               4.説 明    夏屋敷(当家の屋号)の先祖が植えたと伝えられる
                         キャラボクで、樹齢約300年以上と推定される。高さ
                         9.3メートル、直径11.5メートル、周囲約36メートルで、
                         造形されたキャラボクとしては県内随一の威容を誇る。
                         キャラボクはイチイ(イチイ科)の変種で、鑑賞用とし
                         て庭園などに植栽されている。
               5.所有者    盛岡市黒川18地割33番地 佐々木正
                                   平成6年3月  盛岡市教育委員会  
     (大籠)のキャラボク     一関市指定の天然記念物
   所在地 一関市藤沢町大籠字青松4
                          (取材次第掲載します)
     十和田山のイチイ群落     所在地 青森県十和田市 
       秋田・青森両県の県境にある十和田湖のカルデラ東側外輪山に、十和田山があります。御子
       (オンコ)岳ともいわれていますが、山頂部にイチイ(当地名オンコ)の群落があることから
       命名されたようです。
        イチイは主幹が高さ20メートルにも達する常緑の針葉樹ですが、ここでは風衝地のこともあっ
       て、樹形は横に広がっています。尾根筋のキャラボクはこれがさらにハイマツのように進化し
       ていったものと思われます。
                「キャラボク」についての豆知識
       キャラボクはイチイの変種で、本州の日本海側の亜高山〜高山の風衝地に分布しています
       (秋田県乳頭山〜鳥取県大山)。ハイマツと同様、風当たりの強い尾根に生えるのが特徴で、
       高さ1〜3メートルになり、主幹ははっきりせず、枝分かれして地面を這うことが多くみられます。
        刈り込みに強く、寒冷地ではイチイ同様生け垣によく利用されています。元々尾根筋に生育
       していたこともあって乾燥には強いですが、湿気の多いところでは根腐れを起してしまいます。
       なお園芸品種に黄金キャラボクがあり、新葉が黄色で美しく重宝されています。
         
        キャラボクといえば鳥取県大山の山頂付近の群落が有名で、「ダイセンキャラボクの純林」と
       して、国の指定する特別天然記念物になっています。
         

国指定の特別天然記念物「ダイセンキャラボクの純林」
(ホームページ「とっとり文化財ナビ」より)