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カツラはその花粉が白亜紀の地層から発見されたり、果実が
更新世の地層から見つかるなど、かなり古い時代から生き残っ
た植物といわれています。他の樹木にはみられない、いろいろ
な特徴を備えており、萌芽性が旺盛で、何本もの幹が株立する
のもその特徴のひとつです。
各地で「千本桂」と呼ばれるカツラは、そのような株立ちしたカ
ツラを表したもので、その中には天然記念物に指定されている
ものもあります。中でも軽米町にある「古屋敷の千本桂」は、現
地の解説板によると、岩手県内では全樹種第1位の巨樹とされて
います。またひと時、カツラとしては全国一ともいわれました。
(その後それ以上のものが見つかり、今は王座の地位は明け渡
しています)
ここでは軽米町の「古屋敷の千本桂」とともに、遠野市の「小友
の千本カツラ」を紹介します。 |
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(軽米町指定の天然記念物)
所在地 軽米町大字晴山26-77-4 |
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太い幹の周りには萌芽が次々と出ています |
葉は端正な形をしています。病害虫には強いようです |
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下記3枚はクリックすると拡大できます |
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主幹が朽ちてもひこばえが命をつないでいきます |
カツラの巨樹を崇める祠や石碑がいっぱいあります |
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カツラは株立ち状で多幹となる性質があり、カツラの巨樹は必ずしも太い主幹をもっている
わけではありません。環境省の巨樹・巨木林調査の測定では、多幹の樹木は地上130cmの
位置の個々の幹周りの合計をもって幹周りとされています。1991年(平成3年)に環境庁が発
表した「巨樹・巨木」のなかではこの古屋敷の千本桂は、カツラとしては全国一の巨樹でしたが、
その後全国各地でカツラの最大級の巨樹が次々発見されています。 |
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(遠野市指定の天然記念物)
所在地 遠野市小友町大洞 |
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このカツラも山の端の渓流沿いにあります |
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株立ちの中心部はやはりご覧の通り
主幹の世代交代がみられます |
カツラは水の信仰と深く結びついています
ここでも根元に祠を祭っています |
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この株立ちの幹は何本あるのでしょう。しかし離れて見ると、樹冠はあたかも
貴公子のように、1本の大樹のような均整を保っています。 |
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内なるロマンを秘めたカツラ
カツラは恐竜が跋扈していた中生代白亜紀から、1億年近い年月をほとんど姿を変えず生き延びてき
たといわれています。雌雄別株で、花には花弁も萼もなく原始的な姿をしています。一科二属の孤立し
たグループで、わずか日本と中国の一部に命脈を保っているばかりです。紅葉した葉には甘い独特な
香りがあり、樹形や葉の形も端正で、古代王族の末裔の威厳をとどめていると表現する人もいます。
山地の谷沿いの河畔林の重要な樹種の一つで、点々と離れて生えていることが多く、河川の氾濫や
大規模な崩壊や土石流の時にうまく更新できるような性格をもっています。いったん定着すると萌芽に
よって株立ちし、一つの株の中で幹が代替わりして長い寿命を保ちます。その代替わりした回数を株に
残した痕跡より判断し、これに平均的な幹の寿命をかけて推定すると、500年〜1000年以上に達してい
る結果になるそうです。(ブナの寿命は300年前後といわれています)
このようなカツラの特徴には、どのような背景があるのでしょうか。そもそもカツラは小型で羽のついた
種子を多量に遠方まで散布し、開かれた場所を見つけて、小さな芽生えを十分な陽光の下で急速に生
長させ、やがて森林の構成員になっていきます。しかし、安定した森林の中では光が不十分のため、ほ
とんどの芽生えは1年以内に枯れてしまい、子孫は増やせません。そこで森林が安定していて種子によ
る更新が難しい期間は、ひこばえ(萌芽)を出して幹を交代させながら、大きな樹冠と長い寿命を保ち、
大量に種子を撒き散らしながら、稀に起こる河川の氾濫や森の破壊のチャンスをねらっているのです。
カツラになぜ「千本カツラ」があるのか、なぜ姿を変えずに1億年近くも生き延びてきたのか、その秘密
を知る思いがしますね。 |
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